アクセンチュアが2019年5月9日に発表した今後3年間の銀行業界における主要なテクノロジートレンドを予測する調査レポート「Banking Technology Vision 2019(以下、バンキング テクノロジービジョン2019)」によると、銀行の保有する顧客データや機能を外部企業に開放する「オープンバンキング」の動きが世界各地で加速しているのに伴い、銀行は自行のみならず、接続先企業を含むエコシステム・パートナーのセキュリティも強化していく必要があることが明らかとなった。

また加速度的な変革が求められている銀行業界において、「DARQ(ダーク)」と呼ばれる次世代技術を習得することが銀行変革に必須だとも指摘した。

本レポートによると、顧客は自分のデータが銀行で安全に保管されていると信頼している一方で、業界がオープンバンキングに移行する中、銀行はこの信頼を維持するため、堅牢なセキュリティと優れた顧客体験を両立させることが求められているという。

アクセンチュアの銀行グループのグローバル責任者であるアラン・マッキンタイヤー(Alan McIntyre)は次のように述べた。

「エコシステム・パートナーのネットワーク内で最も留意すべき部分が、セキュリティと言えるだろう。オープンバンキングが世界の潮流となり、銀行と外部企業との相互接続が増える中、これらのつながりに起因するリスクにさらされる危険も増加している。顧客は銀行を信頼し、商品やサービスの提供を受ける代わりに個人情報を提供してもよいと考えている。この信頼を維持するために、銀行は自行のみならず、そのエコシステムへと範囲を広げ、セキュリティへのアプローチを見直していく必要がある。そのためには、コンプライアンスを中心としたアプローチから、積極的なサイバーセキュリティ対策を講じるスタンスへと、シフトすることが求められるだろう」

レポートによると銀行が新しいテクノロジーを採用する主な目的は、顧客との親しい関係を取り戻し、小さな町の銀行での取引に似た体験を再現することだという。レポートのアンケート回答者の大半が、デジタル動態統計の活用により、潜在的な顧客ニーズ発掘に向けた新たな市場機会の見極めが可能になる(85%)、また顧客を理解するためのより強力な手段となる(83%)と考えているという。顧客行動への理解を深めることで、銀行はクレジットカード詐欺などから顧客を守ることなどが可能になる。

「銀行は各種デジタルツールで顧客のリアルタイムな情報を捕捉することで、今までは把握しきれなかった顧客ニーズの特定に役立てることができる。これによって銀行は、一人ひとりの顧客に特化した『セグメント・オブ・ワン』という夢のような商品やサービスの実現に大幅に近づく。」

顧客の需要・多様性や技術革新により、銀行にはさらなる顧客体験の向上が求められており、カスタマイズされたサービスをリアルタイムで提供することが、競争力を高めるカギとなる。

5Gネットワークの普及により、銀行は顧客に最も関連性の高い商品やサービスを最適なタイミングで提供することが可能になるとレポートは指摘。5Gは銀行業界に革命をもたらし、金融アドバイスをシームレスに提供できる高速の動画伝送など、商品やサービスの新しい提供方法が可能になるとする。

「銀行業界で進む創造的破壊は、業界全体の構造を変革するだろう。SNSやモバイル、アナリティクス、クラウドといったテクノロジーによりこの5年間で金融サービスは変革し、銀行運営の中核テクノロジーとなった。銀行は、創造的破壊をもたらす次なるテクノロジーを習得する必要がある。」

アクセンチュアではこのようなテクノロジーを以下の4つに位置付けした。

  1. 分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)
  2. 人工知能(AI)
  3. 拡張現実(Extended Reality:XR)
  4. 量子コンピューティング(Quantum Computing)

これらを総称して「DARQ(ダーク)」と呼ぶ。

この中で今後3年間で最も影響力のある技術は「AI」だとし、銀行はAIを活用した運営を強化することでコストを20〜25%削減することが可能であるとしている。なお、半数以上の銀行が1事業部門以上でAIを検証中または導入している一方で、AIの導入予定がない、またはAI導入のための評価を実施していない銀行も20%存在しているという。

また、DARQの4つのテクノロジーのうち、今後3年間で自行に最も大きな影響を与えるのは量子コンピューティングと述べた回答者は19%で、分散型台帳/ブロックチェーン技術は17%にとどまった。これはブロックチェーン技術の早期導入者(アーリーアダプター)が意欲を喪失しつつある可能性も考えられると指摘している。

銀行は顧客のニーズにあったイノベーションだけでなく、労働者のニーズにあったイノベーションにも対応していく必要があるとされ、行員の方が銀行組織よりもうまく対応しており、逆に行員は銀行組織が自分たちのレベルに追いつくのを待っている状況にあるという。テクノロジーの導入により組織が高度化し、行員の異動や配置転換が進むのに伴い、トレーニングやスキルアップも重要となる。

本レポートから「DARQ(ダーク)」をいち早く習得した銀行がより顧客ニーズを満たすサービスを提供し、事業拡大をしながら変革していく可能性が高いだろう。一方で習得した技術に表面上は利便性が向上したとしても、「人材」のレベルアップも図らないと将来的に「宝の持ち腐れ」となる可能性もある。技術革新によりいわゆる「お堅い仕事」が意味をなさなくなる中で、柔軟性や創造力に富む人材をいかに育成できるかが勝負となるだろう。

https://financialservicesblog.accenture.com/japan/five-tech-trends-set-banks-apart-post-digital-era?lang=ja_JP