不動産業界でブロックチェーンを活用した業務効率化を目指すサービスやブロックチェーン企業との業務提携などが次々と発表されている。

2019年7月24日、不動産テック企業であるイタンジ株式会社は、賃貸取引の電子化促進及び2019年10月から国土交通省が主導する賃貸借契約の電子化への対応を見据え、賃貸借契約をオンライン上で行なう新サービス「電子契約くん」を発表した。

また前日には、総合商社である住友商事と国内大手暗号通貨取引所bitFlyerの子会社でブロックチェーン開発を行う株式会社 bitFlyer Blockchainが、住宅の賃貸契約を電子化した上で、物件の内見予約から契約までを行えるプラットフォームの共同開発に向けて業務提携を発表した。

これまで、不動産の賃貸・売買の際には、宅地建物取引士(以下、「宅建士」)による「対面」での契約に関する重要事項の説明が義務付けられており、貸主、管理会社、仲介会社および借主の間の対面でのコミュニケーションや FAX・郵送による契約締結プロセスなど多大な労力を要しているという問題がある。

そういった課題解決のため、2017年10月より政府が推進するITを使った規制制度改革の一環で、賃貸契約においては、売買契約に先行してビデオ会議等のITを活用した重要事項の説明(通称:IT重説)の本格運用が開始され、国土交通省の発表によるとトラブルの相談件数はゼロと、安全な取引が行われていることが報告された。

国土交通省資料:http://www.mlit.go.jp/common/001272922.pdf

国土交通省は「重要事項説明書等の電磁的方法による交付の社会実験」を2019年10月より開始するため、7月16日より社会実験参加事業者の募集を開始した。

国土交通省が推進する賃貸電子化の流れ
イタンジ株式会社発表資料より

国土交通省が推進する電子化の流れから、ITを活用した賃貸業務支援システム開発に強みを持つイタンジ株式会社は、サービスの開発に着手。

同社の発表によると新サービスはブロックチェーン上で契約をプログラム化する仕組み(スマートコントラクト)を基盤としているため、安全性の高い契約手続きを可能にするという。

新サービスを通じて、インターネットを経由したテレビ会議と、電子サインサービスを利用した電子契約システムにより賃貸借契約の電子化及び業務の効率化を図る。

また重要事項説明書(35条書面)と賃貸借契約書(37条書面)は、PDF形式で各管理会社が利用する書面をアップロードすることが可能だという。入居後も同サービス上での契約更新が可能なため、長期に渡りユーザーの利便性の向上、管理会社の業務効率化、中古物件の流通促進に繋げる意向だ。

従来の賃貸借契約と「電子契約くん」が実現する賃貸借契約
イタンジ株式会社発表資料より

新サービスのUI、契約更新、電子サイン手続きには、弁護士ドットコム株式会社が提供する電子契約サービスの「クラウドサイン」や、サイバートラスト株式会社が提供する電子署名用証明書及び「iTrust サービス」を利⽤するという。

ブロックチェーンを基盤としたプラットフォーム上で不動産物件の契約データが管理されるため、物件の空き状況(契約済や空室など)がリアルタイムに反映される。イタンジは同サービスの普及を通じて、昨今深刻化するおとり物件をゼロにすることを目指すという。

また住友商事とbitFlyer Blockchain社の両社も同様に、住宅の賃貸契約に関連する業務の一部をブロックチェーンプラットフォーム上で行うことにより、安心・安全を担保しながら、契約期間の短縮および事務作業の効率化を目指す。

具体的には、契約書を電子化することで、借主を含む契約当事者が、物件申込から契約締結までのプロセスをタイムリーに確認でき、契約書の製本・郵送・調印などの時間やコストを圧縮する。また高い改ざん耐性や可用性といったブロックチェーンの特徴を生かし、契約書の安全な保管や管理に関わる事務の効率化が可能となるという。

将来はブロックチェーン以外の技術も取り入れ、借主がスマートフォン 1 つで物件検索から内見予約、契約、入居、各種費用の支払い、契約更新や退去手続までワンストップで完結でき、かつ不動産業界の各事業者が業務効率化を実現する仕組みの構築を目指す。また売買契約や住宅以外の契約や保証会社、保険会社といった不動産契約と関わりが深い他業種のサービスの利便性向上も視野に入れているという。

また、ソフトバンク子会社でスマートフォン専業証券のOne Tap BUY(ワンタップバイ、東京・港)は26日付で、創業者の林和人・最高経営責任者(CEO)が退任する方針を固めた。同氏は、世界の資金を日本の不動産市場へ流すスキームを構想するという。日本での規制制定を受け、STO(セキュリティー・トークン・オファリング)を、不動産投資に生かす考えだ。

こういった不動産業界の動きの背景には、2013年に政府が掲げた「世界最先端IT国家創造宣言」に基づいた国土交通省主導による関連規制見直しやブロックチェーン技術が暗号通貨という枠を超えたところで認知されてきたといったところが寄与しているようだ。

大手企業、ベンチャー企業など企業の大小に関係なく、ブロックチェーン業界が他業界と繋がるところに新たなイノベーションは生まれる。

中国をはじめ韓国、シンガポールなどアジア各国の例を鑑みると、政府のスピード感を持った積極的な関与が重要な鍵となるのは間違いないだろう。

ソース:https://blockchain.bitflyer.com/pdf/biz-tieup-sumitomocorp-realestate.pdf