暗号通貨の世界は変貌を遂げつつあり、フェイスブック、サムスン、ウォルマート、BMW、シェル、ネスレなどの非金融大手企業は、暗号通貨市場に対して幅広い関心を示しており、環境の変化に対応しようとしている。

暗号通貨の取引や交換を行うにあたって価格の安定性を確保することは重要であり、価格が安定したステーブルコインは流通の循環効率を向上させる。

ステーブルコインというのは、安定した価値と極めて低いボラティリティを持つように設計された暗号通貨である。通常、ステーブルコインは米ドルや金といった資産によって裏付けされている。一方で、MakerDAOのような物理的な担保の必要性を排除して、供給を動的に調整するアルゴリズムに依存するプロジェクトも存在する。いずれにしても、価格の安定が目的だ。

最近になり、いくつかのステーブルコインが発表され、暗号通貨の可能性を示している。例えば、ニューヨークを拠点とする暗号通貨取引所Gemini(ジェミニ)GUSDを発行しているが、ATS(代替取引システム)のライセンス認可申請をしていることが明らかになっている。認可が下りることにより、Geminiのプラットフォーム上でトークン化された資産の取引機会を提供することができるようになる。

このほかにも、JPモルガンが運営する 「JPM Coin」 や、UBS(ユービーエス)、BNY Melon(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)、Barclays(バークレイズ)、HSBC(エイチエスビーシーホールディングス)など多数の銀行が支援する 「Fonality’s Utility Settlement Coin」 という、価格の安定化を目的とした企業向けプロジェクトもある。

Tether|There社

ユーザーにとってステーブルコインを利用する最も重要なメリットの1つは、多数の暗号通貨取引所で広く採用されることで、ボラティリティの高い暗号通貨市場においてリスクヘッジが可能になることである。

現在、最も活発に取引されているステーブルコインはTether(USDT)である。Tetherは米ドルを担保に発行されており、その価格は担保通貨に連動している。また、出来高のある約25取引所で利用されている。Tetherを発行しているTether社は2015年11月に大手暗号通貨取引所Bitfinex(ビットフィネックス)の創設者Phil PotterとGiancarlo Devasiniによって設立された。Tetherは、世界で6番目に流動性の高い暗号通貨であり、時価総額は約39億ドル(約4,200億円)となっている。

以前、ニューヨークのジェームズ司法長官は、8億5000万ドル(約910億円)の損失を隠すためにTetherの積立金を利用したとしてBitfinexとその親会社iFinex(アイフィネックス)を訴えた。しかし、このようなニュースがあったにも関わらず、価格への影響は一時0.85ドル(約91円)まで下落してすぐに、1.01ドル(約109円)まで回復した。つまりTetherの価格安定性にはほとんど影響はなかった。

暗号通貨取引所のエコシステムにとって不可欠な存在であるTetherは、可能な限り広く利用されることを目指している。、OMNIBitcoin)、ERC20Ethereum)、TRONなど幅広いネットワーク上で発行されている。

しかし、これらのネットワークが完璧ではないということを理解する必要があるだろう。2019年7月14日にTetherが、OmniからTRONへのチェーン移行中に50億USDT(5,400億円)を誤って発行したことを報告した。これは「ファットフィンガー」と呼ばれる問題で、発行時に小数点の位置を誤ったことに起因している。この問題によって発行されたTetherは、2回に分けてburn(焼却)された。

主にBitcoinの価格高騰要因がTetherと考えられており、多くの取引所で採用されているため、コミュニティにとっても目が離せない存在であるといえる。また、TetherはBitcoin取引市場全体の75%を占めており、万一USDTの利用が制限された場合、Bitcoinの価格にどのような影響を与えるのかという点は興味深い。今後のイベントとしてTetherを巡る裁判の公判が7月29日に予定されている。

Libra|Facebook

最近注目を集めているLibra(リブラ)はFacebookが発行主体として、Libra Association(リブラアソシエーション)の管理の元、新しいグローバル決済インフラを計画している。Facebookのビジョンは、同プラットフォーム上の1,800万にも及ぶ販売業者と26億人ものユーザーの間にグローバル決済ネットワークを確立することである。Libraの構想は、WeChat(ウィーチャット)やTencent(テンセント)のような決済インフラモデルを西側諸国で模倣することかもしれないが、LibraはCNYではなく、USD、GBP、EUR、JPYなど複数通貨建ての低ボラティリティ資産(銀行預金や国債)の通貨バスケットを採用する計画である。

また、Libraの担保金は、主にガバナンストークンであるLibra Investment Token(LIT)を購入する投資家と、Libraを発行するためにネットワークに参加するユーザーの2つの資金源に基づいて増減する。Libraネットワークの興味深い点は、プライベートチェーンからパブリックチェーンに切り替わった後、BitcoinやEthereumのようなパブリックプロトコルのためのレイヤー2ネットワークとしての役割を果たすことである。これによりパブリックプロトコルで信頼性や性能が低いネットワークは、Libraが許可した安定的なネットワークと価値や資産を利用することが可能になる。

規制面に関しては、共同発案者であるDavid Marcus(デビット・マークス)は、7月16日、17日上院銀行委員会と下院金融委員会で、規制、信頼、プライバシーに関する厳しい質問に答えた。。基本的に上院は、米国を決済分野のリーダーとして位置づけるイノベーションと技術の方向性を支持した。しかし、彼らはデータのプライバシーを扱うことに関して、Libraプロジェクトの管理と実行には非常に懐疑的であるとも述べている。大半の議員は「もしLibraが破綻して、米国が救済しなければならない場合、どうなるのか?」という懸念を抱いていた。。さらにもう1つの懸念として、スイスにLibra Associationを設置しようとしている点である。これは、米国とスイスの間で法律の規制裁定が発生する可能性がある。例えば、米国ではLibraをセキュリティトークンとみなす可能性があるが、スイスの法律には当てはまらないといったものである。

このように多くの注目を集めているLibraであるが、トランプ大統領のツイートと米国財務長官の記者会見からはっきりしているのは、暗号通貨、Bitcoin、ブロックチェーンがプライムタイムの注目を集めたという事実である。Libraが市場に何をもたらすかは、時間の経過とともに答えが出るだろう。今のところ、多くの規制を受けることになるというのが市場の見解である。

DAI|MakerDAO

Ethereumプロトコル上に構築されたMakerDAOは、DeFi(分散型金融)アプリケーションの波を後押しする分散型暗号通貨としてDAIを発行している。これは、担保付債務ポジション(CDP)として知られる手段を使用しており、ETHをスマートコントラクトにロックし、MakerDAOシステムから米ドルに連動しているDAIをローンとして受け取ることができるという仕組みである。つまり、DAIは米ドルと連動しているものの、ETHによって支えられている。EthereumプロトコルにDAIを使用することで、暗号通貨の高いボラティリティによって実現が困難であった金融サービス・アプリケーションの実現が可能となる。DAIの発行と利用を完全にオープンにすることによって透明性を提供することは、分散型金融サービスをリリースするにあたっての鍵となるだろう。

またDAIには、金利に相当する「Stability Fee」というものがあり、この金利については多くの議論が行われている。現在金利は20.5%であり、すべてのユーザーはCDPのポジションを閉じる際にシステムに対して決済する必要がある。これは非常に高く、現在のCDPは過剰担保であると主張する人も存在する。実際に2019年7月25日時点での担保比率は390%前後となっており、8,100万ドル(約87億円)の時価総額に対して、3億2000万ドル(約340億円)の担保が確認できる。

DAIはEthereum上に構築されたDeFiエコシステムの重要な位置付けである。例えば、dYdXでは分散した証拠金取引を可能にしており、UniswapではERC20トークンを交換するための手段となっており、Dharmaでは暗号通貨の貸借を可能にしている。

しかし、DAIユーザーは3つの問題について注意する必要がある。

  1. 揮発性の高い点。
  2. 発行上限は1億ドルで、近いうちに達成される可能性がある点。
  3. DAIの安全性はEthereumプロトコルにも依存している点。

Ethereum 2.0に障害が発生する可能性や、Proof of Stakeに問題が発生した場合、DAIの運用性に影響が及ぶ。

DeFiのインフラストラクチャは、安定したものを中心に徐々に構築されており、ゆっくりではあるものの確実に既存の金融ツールを置き換えていくだろう。

一方で証券取引委員会(SEC)や商品先物取引委員会(CFTC)などの機関によってDAIがどのように分類されるのかという懸念が高まっている。例えば、Basisが発行したステーブルコインは、1億3300万ドル(約140億円)の資金調達にもかかわらず、SECによる規制から逃れられず、閉鎖することになった。

経験豊富な証券弁護士に規制に関する動向を確認するにしても「場合による」という答えが常に返ってくるのが現状である。

今日まで興味深く革新的な金融商品を多く目にしてきたが、すべてのプロジェクトが生き残るわけではない。勝者となるのは、ユーザーからの需要、出来高、流動性、ボラティリティの観点から最も優秀なものが生き残るのではないだろうか。そして勝ち残るのがまだ1つと決まったわけでもない。

https://www.forbes.com/sites/biserdimitrov/2019/07/24/3-stablecoins-enterprise-executives-need-to-know-and-why/#6a4e3dd837d8

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