2019年7月30日、楽天株式会社の三木谷浩史社長率いる一般社団法人:新経済連盟( 以下「新経連」)は、 「ブロックチェーンの社会実装に向けた提言~暗号資産の新法改正を受けて」を金融担当大臣、経済産業大臣及びIT担当大臣宛てに提出したと発表した。

今回の要望は、2019年2月の要望を踏まえ、ブロックチェーン暗号資産に関連する会員企業をメンバーに設置した「ブロックチェーンWG」において議論した内容をとりまとめたものだ。

冒頭で、インターネットによって低コストの情報伝達が可能となったが、取引(価値の移転)については信頼できる第三者を介する必要があった指摘。

ブロックチェーン技術により、第三者を介さずに取引コストを劇的に低減可能だとし、様々な分野での活用が期待されるとした。

一般社団法人新経済連盟発表資料より

提出資料によると、ブロックチェーンの市場規模には、2030年時点で国内で約67兆円、グローバルで約300兆円の巨大市場となるとし、インターネットが主役となった直近30年間で産業構造は予測不可能なほど転換したことを含め、ブロックチェーンをいかに活用できるかが日本企業の競争力を左右する可能性に言及した。

今回の提言における要点を新経連の発表資料を元にまとめた。

【ブロックチェーンに関する要望】

ブロックチェーン分野においては、「世界に乗り遅れない」ではなく「世界のトップランナーを目指す」べきと提案し、大きく以下の3つを要望として提出した。

1.政府は、各行政分野でのブロックチェーン活用の検討
2.官民協議会を設置し、国内外の最新動向の共有、政府・自治体・民間のユースケース及び社会実装に向けた課題を洗い出すべき
3.ブロックチェーンが活用される社会にふさわしい法規制・監督のあり方や、民間発ビジネス創出の後押しをするために必要な支援、関係省庁横断的な機能の設置の検討

一般社団法人新経済連盟発表資料より

【暗号資産新法に関する要望】

今後府令やガイドライン等の詳細を定める際は、セキュリティトークンカストディステーブルコインについて、現状の課題を十分に踏まえ、イノベーションを阻害しない規制の内容とすべきとした。

【セキュリティトークン(投資型ICO・STO)】

契約又は技術により流通性が制限されている場合は、1項有価証券としての規制を課す実質的根拠がないため、電子記録移転権利に該当しないと内閣府令で定めるものとして、項目として以下を含めるように要望した。

  • 譲渡対象が制限されている
  • サービス内の会員やホワイトリスト掲載者にのみ譲渡可能
  • 一定のロックアップ期間が設定
  • スマートコントラクト等の技術により、流通性が制限されていることが担保、など

またSTOに対応した制度設計とするため、将来的に以下について検討するよう記載した。

  • 米国の証券規制等も参考にしつつ、投資家属性等に応じたきめ細やかなルール導入
  • 少人数私募の取得勧誘(声かけベース)について、STOについて購入者ベースとする特例を設けることを含めた見直し
  • 株式投資型クラウドファンディングの1億円・50万円の上限を緩和

実際、米国では2019年4月、SECによるノーアクション・レターが公表され、スマートコントラクトによる譲渡制限を行うことなどを前提に、トークンに証券性がないことを認める旨を回答している。また今月に入り2件目の回答も出ている。

参考記事:「米国証券取引委員会、ERC-20ベースのトークン発行を認める

【カストディ】

カストディについては、新法の定義だと「他人のために暗号資産を管理すること」とされており、具体的な範囲が不明確かつ規制の範囲が広範になりすぎると指摘。リスクベースアプローチを前提とした上で必要最小限の規制とする旨を提言した。またハードウェアウォレットによる100%コールドウォレット管理とすると事業者の負担が大きいとし、クラウドHSMを導入した「論理的遮断によるコールドウォレット」を参考としてあげた。

一般社団法人新経済連盟発表資料より

要点は以下の3点だ。

  • カストディ事業者への該当性及び規制内容の判断はリスクベースアプローチを採用し、必要最小限の規制とする
  • 秘密鍵の管理方法によってリスクのないケースは、カストディ事業者とならない旨、ガイドラインにおいて明確化
  • コールドウォレットの定義を「流出リスクが十分に低減されている又はそれと同視できる状態での保管」とし、物理的な遮断に限定しない
一般社団法人新経済連盟発表資料より

【ステーブルコイン】

ステーブルコインについては、通常の暗号資産の性質を補う価値の安定したコインとして今後の普及が期待されるとし、現状を下記図のように整理した。

一般社団法人新経済連盟発表資料より

また資金決済法などの従来の規制はP2Pで流通するステーブルコインを想定していないため、法的位置付けが明確ではないと指摘。以下の2点について明確化するよう要望している。

  • ステーブルコインの類型ごとの法的性質を、ガイドライン等により可能な限り明確化
  • 特に、法定通貨担保型以外のコインは、非通貨建資産であり暗号資産となることを明確化
一般社団法人新経済連盟発表資料より

【税制】

税制については、2019年2月14日に提出した要望や国会の意思を踏まえ、議論を深め、更なる提言を行っていくとしている。

  • 国会の付帯決議を踏まえ、暗号資産等の取引に関する所得税の課税のあり方について検討

暗号資産に関する税制については、2019年7月19日に業界の自主規制団体であるJVCEA(日本仮想通貨交換業協会)からも2020年度の税制改正に関する要望書が金融庁へ提出されている。

参考記事:「JVCEA、金融庁へ5項目からなる2020年度税制改正要望書を提出

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