英国のスタンダードチャータード銀行(Standard Chartered Bank)が、タイの国営企業である「PTTグループ(旧タイ石油公社)」とブロックチェーンを活用した国際貿易取引における信用状(L/C)試験取引に成功したと発表した。

国際貿易の領域でブロックチェーンを活用した実証実験が進んでいる。

国際貿易における課題

国際貿易では、輸出者と輸入者だけでなく、輸出・輸入地における金融機関、運送業者、保険会社、税関など多くの関係者が取引にかかわる。また取引には信用状や船荷証券、保険証書など様々な書類が必要であり、手続きが非常に複雑である。

輸送時間を要することで商品の引き渡しと代金決済のタイムラグが発生するなど、取引の成立が通常の商取引に比べて難しいとされている。輸出者・輸入者それぞれのリスクを回避し取引を進めることを目的とし、銀行の発行する信用状が用いられる。既存の貿易金融における信用状の取引では、輸出者、輸入者、銀行等と取引関係者も多いうえに、郵送やEメール等の手段で事務手続きを行っており、手続きに時間を要することが課題となっている。

上記のように貿易では物の流れと書類の流れが独立しているため、書類手続きの遅れにより、貨物が届いているにもかかわらず受け取れない事態が発生する場合もある。

石油業界においても同様に手続きが複雑であるという問題があり、手続きには最大で5日もかかるという。日本においても入港(日本到着)から輸入許可までの輸入手続き全体に要する平均所要時間は2.5日(財務省統計)となっている。

実証実験について

今回の取引に要した時間は12時間以下となったようで、従来より著しく高速で行われた模様だ。

今回の実証取引はPTTインターナショナルトレーディングと、タイで輸送燃料や石油化学製品などを製造するIRPCパブリック・カンパニーの間で行われた。この取引には「ボルトロン(Voltron)」と呼ばれるブロックチェーンプラットフォームが使用されている。

Voltronは香港のテクノロジー企業CryptoBLK、ボストンのコンサルティング企業BAIN&COMPANY、ニューヨーク発のブロックチェーンテクノロジー企業R3がパートナーとなっているトレードファイナスプラットフォームのプロジェクトだ。HSBC、ING、スタンダード・チャータード銀行など海外の大手銀行が参加している。

国際貿易におけるブロックチェーンの活用のメリット

国際貿易用においては、複数の企業や組織をまたがったメンバー間で情報共有するコンソーシアム型のブロックチェーンを活用する事例が増えた。理由としては一度記録した情報は改ざん・削除できないというブロックチェーンの特徴を活用し、従来書類でやり取りしていた情報をブロックチェーン上で共有することで、関係者がいつでも正確な情報にリアルタイムでアクセスできる。また、過去の履歴も即座に参照することができる。

個人情報の問題はあるが、金融機関が個別に行っているKYCの情報もブロックチェーン上で共有することで、各社での確認作業を効率化できる可能性もある。

また通関でも、ブロックチェーン管理者が当該の税関官署に権限を与えることで、ブロックチェーンに記録された情報を参照することができ、手続きの効率化につなげることも可能だ。

これにより、関係各社でデータ入力や偽装確認といった作業を行う必要がなくなり、ヒューマンエラーによる伝達の間違いやタイムラグなども解消できる。

国際貿易における新たなプラットフォームとして

今までも国際貿易において電子化する取り組みはあった。しかし、関係者が個別にデータを連携する方法であったため、規約などの統一が難しいことや、個別にシステム開発が必要となりコストが高くなる等の理由で浸透していないの現状だ。一方、ブロックチェーンは非中央集権型であり、特定事業者ではなくその仕組みによって信頼性が担保され、拡張性に優れていることから、国際貿易における新たなプラットフォームとなることが期待されている。

国内における事例

国内だと、2017年8月にNTTデータが業態を越える情報伝達方法の改善、貿易業界全体へのブロックチェーン基盤適用を目指して、「ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤実現に向けたコンソーシアム」を発足させて運営している。

ブロックチェーン技術を活用した貿易情報連携基盤実現に向けたコンソーシアム参加企業

  • 伊藤忠商事株式会社
  • 兼松株式会社
  • 川崎汽船株式会社
  • 株式会社商船三井
  • 住友商事株式会社
  • 双日株式会社
  • 損害保険ジャパン日本興亜株式会社
  • 東京海上日動火災保険株式会社
  • 豊田通商株式会社
  • 日本通運株式会社
  • 日本郵船株式会社
  • 丸紅株式会社
  • 三井物産株式会社
  • 株式会社みずほフィナンシャルグループ/株式会社みずほ銀行
  • 三井住友海上火災保険株式会社
  • 株式会社三井住友銀行
  • 株式会社三菱UFJ銀行
  • OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.