国際会議「ダボス会議」を開催する「世界経済フォーラム(WEF)」は、11月26日、ステーブルコインとそれらの基盤となるブロックチェーン技術は、米ドルによって支配されることによるリスクを和らげ、持続可能かつ回復力のあるグローバル金融システムを構築する可能性があるとの見解を発表した。

またSDGsが掲げる目標10:「国内および国家間の不平等を是正する」がターゲットとする「2030年までに、移動労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を超える送金経路を撤廃する」を実現する可能性があると指摘した。

WEFは、ステーブルコインがより回復力のある世界経済にとって重要となるのは、米ドル(USD)が世界の外貨準備を支配することによってもたらされる潜在的な脅威の一部を和らげることだという。

米ドル支配による世界的な金融不均衡は、世界の金融システムに連鎖的な影響

IMFより

通常、外貨準備は貿易によって国家に蓄積され、自国通貨の価値を安定させる上で中央銀行にとって重要な役割を果たしている。IMF資料によると、2019年第1四半期の全て中央銀行が保有する外貨準備の約62%を米ドルが占めていると指摘。また通常は米国国債の形で保有されていることを挙げ、米ドルの米国債への一方的な流れが、米国の金利を低水準に維持し、米国の貿易赤字拡大や経済成長の圧迫を招いているという。

2008年に起こったサブプライムローンを発端とした世界的な金融危機のように、大きな政治的もしくは経済的混乱は投資家を米ドル建ての「安全資産」に逃避させる。このような米ドルへの逃避は、流動性を急速に枯渇させ、世界の金融システム全体に連鎖的な影響を引き起こす可能性があると指摘。

複数の通貨に裏付けされたデジタル準備通貨は米ドルへの依存を軽減

2019年8月イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は、主要通貨(米ドル、ユーロ、英ポンド、円を含む)のバスケットに支えられたグローバルなデジタル準備資産を作成することにより、国際準備通貨である米ドルへの過度な依存を減らすことができると主張した。

多様化されたデジタル通貨(全てではなく、部分的にのみ米ドルで重み付けされている)は、政府が備蓄しているドル資金のロックを解除し、世界の流動性、貿易、投資を増やすのに役立つ。

このような多様化した国際準備通貨の枠組みは、IMFの特別引出権(SDR)の形で、50年前から存在しているため不可能なことではない。

ステーブルコインは金融包括を進める

さらにWEFは、デジタル準備通貨は米ドルに偏っている流動性の源泉を多様化し、貿易の流れのバランスを取ることができるとしている。更にステーブルコインは、世界の貧困層の物理的な現金への依存を減らし、「金融包摂」を高めると指摘。現在、世界では成人の3人に1人は銀行口座も保有しておらず、その多くは1日数ドルで生活している。この問題は、銀行店舗やATMのような物理的な金融インフラが限られた範囲にないことによりさらに悪化すると指摘。

現金を保有、管理、取引することは、銀行口座を保有しない人にとっては財務やセキュリティなどが負担となる。仮に銀行口座が開設された場合でも、銀行手数料の発生を避けるために、最小限の口座残高が保持されることとなり、取引は最小限に抑えられる。そのため、ほとんどの銀行にとって、世界にいる約17億人の銀行を持たない成人は大事な顧客とはならないと指摘。

また数十億人以上の金融インフラが不足している人は、最低口座残高を保持していても、取引などの利便性のため、現金に依存しているという。そのためほとんどの銀行が低所得の口座保有者に金融サービスを提供するのに十分なデータを持っていない。

アフリカなどの開発途上国だけではなく、米国の連邦預金保険公社による2017年の調査によると米国の世帯の25%(5,000万人以上の成人)が銀行に預けていないか、銀行が不足しているとの結果が出ているという。

WEFによると、発展途上国においては通常、銀行は信用報告サービスへのアクセスが制限されていて、多くの銀行はローン返済などの不確実性をヘッジするために、高いレベルの担保や高金利を提示する傾向にある。このような世界的な信用格差に取り組むため、借り手のデジタルフットプリントなどを分析して、将来予想されるボラティリティと返済の可能性を予測するようなフィンテック産業が世界的に出てきていると指摘。

ステーブルコインは、外国為替リスクへのエクスポージャーと国際決済ネットワークに関する高額な手数料を削減することができ、国境を越えて消費者および中小企業の信用を拡大できると評価している。

またステーブルコインとその分散台帳を使用した国際送金は、コルレス銀行など仲介者を排除し、手数料の削減と即時の決済を可能にするという。

2030年までに送金取引コストを3%に削減することは、SDGsが掲げる目標10:「国内および国家間の不平等を是正する」のターゲットの一つでもあり、成功すれば、世界の貧困層にとって実質的な減税となる可能性があると指摘している。