ブロックチェーンを活用したデジタルアートレジストリのArtory(アートリー)は、4月23日、シリーズAの資金調達ラウンドで730万ドル(約8億1千万円)の資金調達に成功した。

ArtoryはTEFAF(The European Fine Art Foundation)の代表であり、サザビーズニューヨークの元副会長でもあるナーン・デッキンが2016年に創業した最新テック系スタートアップである。
彼らは近年ブームとなっているブロックチェーン技術をアートの世界に取り入れることで、アート業界で初めてとなる包括的なデータ収集ソリューションを実現しようとしている。
Artoryのデジタルアートレジストリによって、アート作品の取引記録などをブロックチェーン上に記録し、その透明性を効果的に検証できるようになる。

Financial Timesのメラニー・ジャーリスによると、シリーズAに参加した投資家は、Spotifyを買収したハイテク系ベンチャーキャピタルの2020 Ventures、ハイエンドのライフスタイル商品のオンラインプラットフォームである1stdibs、SAPの共同創業者兼会長であるハッソ・プラットナーが設立したHasso Plattner Capitalなどが名を連ねているという。

4月上旬には、Artoryは世界の4000ものオークションハウスから集まる売上記録を蓄積する会員制データベース、Auction Clubを取得している。
これにより40カ国250以上の企業から集められたAuction Clubの売上記録が初めて公表され、5月にはこの情報がArtoryのサービス上で見られるようになる予定だという。

Auction Clubのデータベースには最終価格や評価額に関わらず、1970年代以降にファインアートやコレクター作品を専門とする世界の中堅から大手までのオークションハウスで行われた取引のすべてが記録されている。

またブロックチェーンに記録するデータ自体の正確性についても、Auction Clubのデータベースは自社のガイドラインによって厳しく管理されているという。データベース取得は、Artoryにとって膨大なデータを素早く入手できる、またとない好機であったようだ。

アートエコノミストであるクレア・マクアンドリューは、世界の美術品市場の分析レポート「Art Basel and UBS Global Art Market Report」を作成する際にこのデータベースを利用したという。
彼女によると、このデータベースは全ての取引記録をカバーしており、マクロおよびミクロレベルでの調査に役立てることができるそうだ。
また「アート作品を取引する際に直面する重大な課題」を解決できるかもしれないと付け加える。
なぜなら、現在のアート作品の市場価格は、ほとんどの場合「極めて限られた範囲の買い手と売り手によって決められる」からだ。

昨年11月にArtoryは世界最大手オークションハウス、クリスティーズと提携している。

ナーン・デッキンは同社の目標について次のように話す

「私たちは”オークション市場で私たちに協力してくれるパートナー”をより多く見つけ、最終的には『作品所有者の匿名性を保ちながら作品を売却できるシステムを作る』ことを目指す。」

しかし、同社にデータを集中させることはブロックチェーンの非中央集権的な側面にとって問題とはならないのだろうか?

このような疑問に対し、ArtoryのCPOであるポール・ステイブ氏は以下のように答えている。

「他のすべてのテクノロジーと同様、私たちはユーザーの問題を解決するものを構築しなければならない。ブロックチェーンにおける分散化はセキュリティ上の利点だ。アート業界にとって、ブロックチェーンによって信頼できるデータを利用できるようになれば、それは大きな利点になる。」

https://medium.com/artory/artory-raises-7-3m-in-series-a-funding-52b4771b1634
https://medium.com/artory/artory-acquires-leading-art-database-auction-club-63b8fa40a3cb