ビットコインには、マイナーへの報酬手数料やスケーラビリティ問題といった課題が存在する。
これらの課題により、ビットコインは送金・決済通貨としての役割を果たしているとは、言い難い状態となっている。
本記事では、ビットコインの抱える問題を解決するライトニングネットワークについて、その仕組みを詳しく解説する。

ライトニングネットワークの仕組み

ライトニングネットワークは、ビットコインが抱える課題を解決するために開発された仕組みである。
そのため、まずはビットコインの抱える最大の課題、スケーラビリティ問題について説明しておく。

スケーラビリティ問題

スケーラビリティ問題とは、ビットコインの利用シーンが増加することにより、取引の処理が追いつかなくなる問題である。

現状のビットコイン(ブロックチェーン)は、1秒あたり約6~7件の取引しか処理できない。
参考までに、VISAカードの1秒あたりの取引処理件数は、約4000~6000件といわれている。
要するに、現状のビットコインは、送金・決済通貨として全く適していないのである。
このスケーラビリティ問題を解決するために開発されたのが、ライトニングネットワークである。

オフチェーン処理

ライトニングネットワークは、オフチェーンと呼ばれる仕組みの一種である。
オフチェーンとは、全ての取引をブロックチェーン上で処理する必要はない、という考え方の元に誕生した。
オフチェーンを活用することで、ブロックチェーンの処理制限から解放され、1秒間に多くの取引を処理できるようになる。
このオフチェーンの代表例が、ビットコインのライトニングネットワークや、イーサリアムライデンネットワークなどである。

ペイメントチャネルの活用

ライトニングネットワークでは、ペイメントチャネルと呼ばれる決済ネットワークを活用している。
このペイメントチャネルを活用することで、全ての取引をブロックチェーンに記録せず、取引の最終結果のみを記録すれば良いことになる。

例えば、AliceがBobに総額5BTCを5回に分けて送金する場合、ブロックチェーンには5回分の取引履歴を記録する必要がある。
しかし、ペイメントチャネルを利用すると、AliceからBobに5BTC送金したという最終結果のみが、ブロックチェーンに記録されることになる。

要するに、当事者間の取引プロセスはペイメントチャネルに記録し、プロセスを一つにまとめた結果だけをブロックチェーンに記録する、ということである。

このペイメントチャネルは、当事者間で初めて送金を行う場合には、新たにチャネルを開設しないといけない仕組みとなっている。
ライトニングネットワークは、ペイメントチャネルの抱えるデメリットを解消した形で発明された。

ライトニングネットワークでは、AliceからBobに初めて送金を行う場合でも、過去にCharlieとのチャネルを開設していれば、Charlieを介してAliceからBobに送金することができる仕組みとなっている。

つまり、ライトニングネットワークは、第三者を経由してビットコインを送金できる仕組みなのである。
そのため、ライトニングネットワーク上では、より多くのチャネルを開設しているノードが、ハブとしての役割を果たすことになる。

マルチシグとHTLCによるセキュリティ向上

ライトニングネットワークでは、第三者を経由してビットコインを送金するため、より高いセキュリティが求められる。

ここで登場するのが、マルチシグとHTLC(Hashed Timelock Contracts)である。

ライトニングネットワークを使用するには、送信者と受信者がそれぞれ鍵を持つ、マルチシグを必要とする。
そのため、ハブとなる第三者は、当然ビットコインにアクセスすることはできない。
さらに、このマルチシグに対して、HTLCの仕組みを組み合わせることで、さらなるセキュリティの向上も実現している。

HTLCは、ハッシュ関数とタイムロックという仕組みで構成されている。
ハッシュ関数は、ライトニングネットワーク以外でも使用される、一般的な仕組みであるため、ここではタイムロックについて解説する。

タイムロックとは、特定の条件が満たされるまで、ビットコインを送金できないようにする仕組みのことである。
タイムロックは、CLTV(Check Lock Time Verify)とCSV(Check Sequence Verify)の2種類に分類できる。

  • CLTVには、「2019年3月1日まで送金をブロックする」といった、絶対的な条件を指定できる。
  • CSVには、「今日から10日先まで送金をブロックする」といった、相対的な条件を指定できる。

この仕組みにより、送金相手が何らかの理由で、ビットコインを受け取らなかった場合でも、タイムロックで設定した条件を満たせば、自動的に返金されるといったことが実現できるのである。

ライトニングネットワークはなぜ期待されているのか

ライトニングネットワークの仕組みについて解説してきたが、ここからは、ライトニングネットワークのメリットと課題について触れていく。

ライトニングネットワークのメリット

まず、最も実用化が期待されているのが、少額送金である。

IoTの普及により、マシンとマシンが直接繋がる社会が実現しつつある。
しかしながら、現状のビットコインでは、1円未満の送金、いわゆるマイクロペイメントを実現できない。
これは、ブロックチェーンを使用する度に、少額の手数料をマイナーに支払う必要があるためである。

ライトニングネットワークを活用すれば、取引の大部分をペイメントチャネルで処理できるため、手数料が発生せず、マイクロペイメントが実現できる。

また、スケーラビリティ問題の解消による、送金時間の短縮化も、実用化が期待されている。

現状のビットコインには、先述のスケーラビリティ問題による「送金詰まり」が発生している。
ライトニングネットワークによってこの問題が解消され、クレジットカードに匹敵する処理速度を実現できる可能性があるといわれている。

ライトニングネットワークの課題

ライトニングネットワークが抱える課題としては、やはり実用化がなかなか進まないという点があげられる。

現状のライトニングネットワークを利用するには、専門的な知識が必要となっている。
例えば、ペイメントチャネルの開設方法や、タイムロックの設定方法など、とても一般社会に受け入れられるような状態にはなっていない。

ライトニングネットワークの利用状況は、以下のExplorerなどで随時確認できる。

これを見ると、徐々にネットワークが拡大しつつあるものの、一般社会に浸透するまでには、まだまだ時間がかかると思われる。

また、特定のノードがハブの大部分を占める状態になる、という課題も存在する。

ライトニングネットワークには、無数のハブが存在し、そのハブを経由することで送金が可能となる。
そのため、初期に参加したノードほど、多くのチャネルのハブとなっているのである。
これではまだ分散型のネットワークとはいえないため、今後の進展に注目したい。