リブラ(libra)ホワイトペーパーが発表されてから、1週間あまりが経過した。今後、このリブラの行き先を握るのはフェイスブックではなく、「リブラ・アソシエーション」だ。リブラ・アソシエーションがどのようなルールに基づいて運営をされていくのか、以下概要や評議会など運営に関する詳細を記載する。

リブラ・アソシエーション(Libra Association)の概要

リブラ・アソシエーションはスイスのジュネーブに本拠地を置く非営利団体。シンブルなグローバル通貨と金融インフラを構築することにより、何十億もの人々に力を与えることをを使命とする。

フェイスブックが提唱した独自暗号通貨「リブラ(libra)」を管理・監督する機関でもあり、その役割は2つだ。

  1. 検証ノード間におけるガバナンスを効かせ、リブラネットワークを安全に開発する
  2. 様々な取組を調整し、ファイナンシャル・インクルージョンというビジョンを推進する

この調整とガバナンスについては、技術的な側面と財政的な側面がある。

  • 技術的な側面:リブラネットワークのロードマップを中心に、検証ノードとオープンソースコミュニティ間の調整を推進
  • 財政的な側面:準備金を管理し、社会的な影響などを分析し資金を配分

また上記2つに加えて、スタート期のリブラ・アソシエーションにはいくつかの役割がある。

  • バリデーターノードとして機能する創設メンバーの募集(約100団体程度まで)
  • Libra Investment Token(リブラの準備金に蓄積された将来の利益の一部に権利を付与するトークン)の売却によるメンバーおよび他の投資家からの資金調達
  • 設立メンバーへのインセンティブの配布を含む、インセンティブプログラムの設計および実施
  • Libra Investment Token保有投資家への配当金の分配

これらの役割に関しては、リブラネットワークが次第に完全な分散型のネットワークに近くにつれ必要がなくなる可能性があるとホワイトペーパーでは述べている。

リブラアソシエーションには4つの組織とチームが存在する。

  1. 評議会
  2. 理事会
  3. SIAB(Social Impact Advisory Board)
  4. エグゼクティブチーム

以下、リブラ・アソシエーションの責任や役割、各組織の詳細を記載する。

リブラアソシエーションの目標とミッション

目標

  • 参加への参入障壁及び創設メンバーへの依存度を下げることにより、完全に分散化されたガバナンス及びコンセンサスノード操作への移行。
  • 準備金の管理を完全に自動化することにより、準備金管理者としてのリブラ・アソシエーションの役割を最小限にする。
  • オープンソースコミュニティの調整を行うことにより、リブラネットワークのロードマップを策定、推進していく。

ミッション

シンブルなグローバル通貨と金融インフラを構築することにより、何十億もの人々に力を与える。そのためファイナンシャル・インクルージョンを促進する組織やアプリやツールの開発者や研究者と密度の高いパートナーシップを築く。

意思決定について

  • バリデータノード:評議会に参加するバリデータノードは大きなパワーを保有、評議会はその執行権限の多くをリブラ・アソシエーションの経営チームに委任するが、2/3以上の賛成を得ることができれば委任された決定を無効にし、重要な決定を保持する権限がある。
  • 比例投票権:評議会の投票権は保有割合に比例する(Libraインベストメントトークン、将来的にはLibra)。これはメンバー(バリデータノード)のネットワークに対するコミットメントレベルを反映。ただし、投票権は権力の集中を避けるためにメンバーには上限がある。
  • オープンでコラボレーティブ:意思決定はメンバー(バリデーターノード)間で透明性があり、かつコラボレーティブである。
  • 効率的:できる限り合理化された意思決定を行うことを目的とし、メンバーはその決定を可能な限り実行するために行動する。

技術について

  • オープンソース:Libra Blockchainのコードと仕様はオープンソースである。オープンソースの開発者と研究コミュニティによって進められる。
  • 開発:リブラブロックチェーンがその使命と関係者にとって役立つようにリブラ・アソシエーションは新しい研究開発に資金供給し、育成。

準備金管理について

  • 準備金は、価値保存を目的として運営される。
  • 法定通貨がリブラエコノミーに入ってきたり、外貨やその他資産を保有しているバスケットが成長するなどに応じて、リブラを採掘する。
  • リブラ・アソシエーションはリブラを準備金の中にある資産と引き換える「最後の買い手」としての役割を持ち、その際リブラを焼却できる。
  • リブラ・アソシエーションの活動は、メンバーの2/3以上の同意によってのみ変更できる管理方針に従って制約・管理される。

1.リブラ・アソシエーション評議会(Libra Association Council)

評議会のメンバーについて

評議会のメンバーになるには、リブラネットワークの成功と経済的な利害関係を持っている必要がある。

創設メンバー:現時点で評議会のメンバーは下記の創設メンバーのみであり、リブラネットワークの最初のバリデータノードとして機能する。

企業は、Libra Investment Tokensを購入することによって、ネットワークに最低1,000万ドルを投資する必要があり、1,000万ドルの投資ごとに、上限に応じて、議会で1票の投票権が取得できる。

ただし、マンモス企業が関連会社を使って複数社でアカウントを持つことはできない。これは上限があることをによって、シェアを伸ばそうとする悪意を防止するためだ。

Libra Investment Tokensを購入したにも関わらず、最初検証ノードを運用しないという選択をした場合でも改めて検証ノードの運用を開始しようとすれば投資家は、すぐにバリデータメンバーに変更することができる。

またリブラネットワーク拡大のためのマイルストーンを達成することで、評議会に新しいメンバーが加わる仕組みだ。

このような移行のペースや技術・ネットワーク上の成長目標は、全てリブラ・アソシエーションによって決定される。また5年目までは、リブラ・アソシエーションの投票権のうち少なくとも20%は、リブラインベストメントトークンの数量だけでなく、リブラの保有数量に基づいてノードオペレーターへ投票権が割り当てられる。

どこかに議決権を集中するのを防ぐため、投票権は評議会メンバーは保有しているリブラインベストメントトークン及びリブラの量に関係なく、投票権1票、もしくは総投票権の1%のどちらか大きい方となる。この上限は、評議会メンバーではない、単なるネットワークに参加するバリデータノードには適用されない。

一方で、投資規模に比例して与えられる「Libra Investment Tokens」から受け取る経済的利益を制限するものではない。

この上限を超える投票権を取得するような金額でLibra Investment Tokensやリブラを保有する創設メンバーは、その超過投票権をリブラ・アソシエーション理事会へ委任することができる。

理事会は、「Social Impact Advisory Board(以下、SIAB)」の勧告に基づき、下記の条件で、委任された投票の一部または全部を「Social Impact Partners(SIP)」 や研究機関に委任することができる。

  • バリデーターノードを運営する能力と運営に参加できるが、最低1,000万ドルを投資をすることはできない。
  • 参加しているSIPや研究機関のその他の適格基準を満たしている。
  • SIPや研究機関は、設立メンバーと同じ投票上限の対象となる。
  • 配当を受け取る権利はない
  • 検証ノードメンバーの適格基準を満たさなくなった場合、評議会により失効が可能

こうやってSIPや研究機関に割り当てられた投票権の総数は、評議会における総投票権の3分の1以下とするとしている。

理事会で利用でき、かつSIPや研究機関に委任されていない投票権は、他のバリデータノードの投票権と比べ、創立メンバーの相対的な総投票権を維持するために、メンバーの間で均等に分配することとなっている。

時間の経過と共に増加するとしつつも、リブラプロトコルは少なくとも数年の間はアクティブに動く検証ノードの数に制限があると予想。

評議会は、テストに基づいてアクティブノードの数に関する制限を定義し、徐々に制限を変更していく。この制限を超えた場合、最も少ない投票が割り当てられた評議会メンバーは、ノードメンバーが規定された数を下回るまで評議会から除外される。また合意アルゴリズムに参加した期間が最も短いメンバーが除外されると復活できる。

リブラネットワーク内の非アクティブバリデータノードの数が多くなり、合意プロトコルの有効性を危うくする可能性を防止するため、バリデータノードが10日間連続して合意アルゴリズムに参加しなかった場合、リブラプロトコルによって自動的に評議会から除外される。しかし、ノードが作動可能になると再び参加することができるようになる。

評議会では、リブラアソシエーションを運営するマネージング・ディレクター(MD)を選出することが求められており、MDとなったメンバーの投票権を他の当事者に委任することが可能。またその代表取締役はいつでもメンバーのひとりに戻ることができる。

役割と権限について

評議会の役割と権限

  • リブラ・アソシエーション理事会のメンバーの選出と解任
  • 代表取締役の選任・解任、報酬の設定
  • リブラ・アソシエーションの予算を承認
  • メンバーがそれぞれの職務を遂行するために必要な権限を委任
    たとえば、リブラを採掘する許可や準備金プールから創設メンバーに支払う許可など。
  • リブラ・アソシエーションの代わりに、一般的に「 ハードフォーク」と呼ばれる勧告を出す。
  • 機能を実装するスマートコントラクトを発動するために評議会を活用し、バリデータにデプロイされたLibraプロトコルの機能をアクティブにする。
  • プロトコルをアップグレードまたは交換するために、Libraプロトコルの開発者と協力する。
  • 創設メンバー(バリデータノード対象)を除名する
  • 理事会を代表して拒否または決定を下す。
  • 2/3以上の承認によりリブラ・アソシエーションの指針となる原則を変更可能
  • 評議会は、委員会(メンバーによって構成)を創設し、2/3以上の承認を必要とする決定以外の権限を各委員会に任命/委任することができる。

評議会会議について

  • 評議会定例会議は、少なくとも開催の25日前にリブラ・アソシエーションの理事会によって決定され、隔年で開催
  • 臨時総会及び緊急事態(ネットワークへの攻撃など)に対処するための即時総会の招集は理事会または評議会メンバーの10%の賛成が必要。緊急会議の場合、電話での投票も可能
  • すでにスケジュールされている会議をキャンセルまたは再スケジュールすることができる
  • 評議会会議は、会議通知により定められた場所と時間に開催。協議会の会議では、メンバーはビデオ会議で参加。

投票方法について

  • 特別な決定には、すべての議会議員の総投票数の少なくとも3分の2以上を必要とする。
  • その他の決定には、通常次の条件における過半数以上が必要
    投票に参加しているメンバーの少なくとも半数が承認。ただし、総投票数の3分の2以上を持つメンバーが会議に出席していること
    全評議員の総投票数の少なくとも半分がその決定を支持していること
  • 技術的に実行可能である限り、リブラプロトコルは評議会で決定したことをチェーン上の行動(例:新しい創設メンバーの追加)として制定することができる。一方「実社会」での決定(例:マネージングディレクターの報酬)への投票は、リブラブロックチェーンに記録、もしくは評議会によって選択された方法で関連する会議の議事録に記録

2.リブラ・アソシエーション理事会(Libra Association Board)

役割

理事会はリブラ・アソシエーション評議会の監督機関であり、リブラ・アソシエーションの運営チームに業務指導をする。

メンバー

理事会は5人以上19人以下のメンバーで構成。評議会によって人数は決定。

  • リブラ・アソシエーションのマネージング・ディレクター(MD)
  • 評議会によって選出された評議会メンバー
    最初の選挙は、第一回会議で行われる
    理事の任期は1年。毎年無期限で再選可能
  • 理事会のメンバーが、評議会メンバーやマネージングディレクターでなくなった場合、自動的に終了
  • 評議会は常時多数決により、いつでも理事会メンバーを解任可能
  • 理事会の決定は、理事会の投票の通常過半数を必要とする。
    総投票数の2/3以上が参加する投票において、参加した投票の半分以上の支持
    全理事の全投票数の半分以上が決定を支持

権限

  • 理事会の義務は評議会によって決定

評議会は特定の権限を除き、以下のような権限を理事会に割り当てることができる。

  • 評議会による承認の前に、協会の予算を事前承認
  • 新しいLibra Investment Tokensの売却による資金調達ラウンドのタイミング、またそれがリブラエコシステムの成長に必要でない場合、否決案を議会に提案
  • リブラ・アソシエーションのエグゼクティブチームから、エコシステムの進捗状況及びそれに関する四半期ごとの最新情報を受領。対処すべきトピックと、これらの状況および進捗状況レポートで提供される情報を定義
  • 注意を喚起した場合は、リブラ・アソシエーションのマネージングディレクターに代わって決定
  • 評議会の議題を設定
  • 評議会の緊急投票の招集
  • SIABによる助成金及び助成金の推薦を承認
  • 創設メンバーからの委任の下でノードになる資格があるSIPを承認

3.Social Impact Advisory Board(SIAB)

役割

SIABは、非営利団体や多国間機関、学術機関などの社会的影響パートナー(SIP)が率いるリブラ・アソシエーション評議会の諮問機関

メンバー

  • 諮問委員会は5〜7人のメンバーで構成され、評議会によってSIABのメンバー数を変更可能
    ①リブラ・アソシエーションのマネージング・ディレクター(MD)
    ②評議会によって選出されたSIPおよび学術機関の代表者
  • 最初の選挙は、第一回評議会会議で行われる
  • 任期は1年、毎年無期限で再選可能
  • 評議会は、常時多数決でいつでもメンバーを解任できる

権限

  • リブラ・アソシエーションの使命に沿ったSIAB長期戦略の設定
  • SIABが補助金と社会的影響のある投資の配分をどのように推奨するかの基準を作成
  • 助成金受領者の選択を含む、助成金申請のプロセス構築および実施
  • 社会的影響の測定と報告、新しい社会的影響への取り組みを展開、リブラエコシステム全体にわたる受領者からの情報を習得
  • 他のSIPをリブラ・アソシエーションに参加させるための窓口機能
  • SIABによって合意された補助金/資金援助の勧告は、理事会にあげられる。
  • SIPがどの創設メンバーからの推薦でノードとしての役割を果たすことが承認されているかについて、理事会に報告

4.経営チーム(The Association’s Executive Team)

経営チームの役割

経営チームは、以下のような日常業務を担い、アソシエーションの運営を行う。

  • リブラネットワークの開発促進
  • リブラ準備金の運営
  • Libra Investment Tokensを公認投資家へ私募による売却をし、創設メンバー(および他の投資家)から資金調達
  • 事前に設定された条件と方針に従い、創設メンバーおよびすべての投資家に資金を分配
  • マネージングディレクター(MD)が経営メンバーを採用

マネージング・ディレクター(MD)

  • 任期は3年、事情による辞任などがあればすぐに評議会より選出
  • リブラ・アソシエーションへ常勤及び理事会のメンバー
  • 評議会のメンバーは誰でもMD候補者を提案することが可能
  • MDは無期限に再選可能
  • MDの選挙は、第一回評議会会議で行われる

マネージング・ディレクターの責任

経営チームの権限は、評議会によって委任される。

リブラネットワーク管理

  • リブラプロトコル仕様のソース管理リポジトリを管理するためのプロセスを定義
  • リブラプロトコルのLibra Core実装を管理するためのプロセスを定義
  • Libra Coreソフトウェアをリリースおよび配布し、Libra Coreソフトウェアのインストールおよび保守で必要に応じてノードのサポート
  • セキュリティレビューを調整し、厳格なセキュリティテストを通じて製品を公開
  • 開発チームと協力して、LibraプロトコルおよびLibra Coreへの貢献を促進し、必要に応じて資金提供
  • ノードが実行するソフトウェアをアップグレードし、それらのアップグレードのスケジュールを調整することをノードに提案/推奨
  • 完全な分散型のブロックチェーン技術について調べ、そのような技術への移行のため、評議会及び理事会へ道筋を推奨

創設メンバーの募集と勧誘

  • 投資家および/または創設メンバーとしてLibraネットワークに参加するよう、適格当事者に働きかける
  • Libra Investment Tokenの規約と方針に従い、公認投資家および創設メンバーへのLibra Investment Tokenの販売管理やインセンティブおよび配当管理
  • インセンティブ方針に従い、対象となる創設メンバーにリブラでインセンティブを配布。創設メンバーの記録を監査。
  • 十分な収入が準備金に蓄積されている場合は、Libra Investment Tokenの条件に従い、すべての投資家へ配当金の分配
  • 承認された予算に従い、リブラ・アソシエーションの活動資金を割り当てる
  • 評議会へ月次報告書を提出
  • インセンティブ方針の変更を評議会および理事会へ提案

リブラ準備金の管理

  • リブラの採掘及び燃焼プロセスの監督
  • 準備金の資産価値が方針の基準を満たしていることを確認
  • 方針に従い、高い流動性を維持しながら、低リスク資産に準備資産を投資
  • 第三者の流動性供給者が準備金の中の資産とリブラを交換することを許可
  • 承認された予算に応じて、準備金の利子から発生した資金を協会の活動資金に割り当て、他の資金をノードおよび投資家に分配する。
  • リブラエコシステムとリブラの経済的な動きを継続的に監視し、理事会と評議会に報告
  • 準備管理方針の変更を評議会に提案

予算と管理

  • 評議会メンバーを招集するためのプロセスを設定
  • 予算、関連するロードマップ、採用計画を理事会と評議会に提案

経営チームの構成

  • Deputy MD/COO(副MD/最高執行責任者):MD不在の場合、代理となって人事及び運営管理をする
  • CFO(最高財務責任者): 財務/通貨交換、投資家向け広報
  • Head of Product(製品開発責任者):ソフトウェアおよびLibraネットワーク管理チームの責任者
  • Head of Business Development(事業開発部長):BDチーム、創立メンバー担当チームの責任者
  • Head Economist (エコノミスト):マクロやミクロ経済予測などエコノミストチームの責任者
  • Head of Policy :アドボカシーおよびコミュニケーションチーム
  • Head of Compliance and Financial Intelligence:コンプライアンス責任者
  • General Counsel(顧問弁護士):法務

リブラ・アソシエーションのメンバーは、経営チームがその責務を遂行できるように、支援するために最善を尽くさなければならないとしている。

リブラ(Libra)は自由度が高くかつガバナンスの効いている組織となる可能性が高い。柔軟性を持たせた運営で今後、どのような展開を図っていくのか引き続き注目したい。