電力会社によるブロックチェーン業界への参入や技術を活用した実装実験が増えている。

2019年6月30日、中部電力株式会社は、取引内容を暗号化する分散台帳技術に強みを持つ合同会社Keychainと共同でブロックチェーン技術を活用した個人認証の実証実験を行い、個人認証基盤として機能することを確認できたと発表した。

今回の実験は中部電力の技術開発本部にて、ブロックチェーン技術を活用した個人認証、および分散台帳を利用したデジタル・アセットの発行と個人間取引の実証実験の実装を行った。

デジタル・アセットの発行者、利用者(30名程度)、店舗の3者で取引を実施するという内容だ。

Keychain側での実装作業は2018年11月下旬~2019年4月中旬に行われ、2019年4月下旬~2019年5月上旬にかけて中部電力技術開発本部で社員約30名を対象に実証実験が行われた。

今回の実証実験の主目的としては下記の3つだ。

1.      個人認証基盤としてKeychainブロックチェーンの有効性を検証
2.      中部電力がデジタル・アセットを発行。二重譲渡や改ざんリスクの検証
3.      分散台帳技術が利用できるAndroidアプリを利用し、食堂や個人間での支払いなどに利用できるか検証

実証実験で、ブロックチェーン技術が個人認証基盤として機能すること、および分散台帳にてデジタル・アセットが発行でき、二重譲渡や改ざんなどがおきずに個人間取引が可能であることが検証されたという。

2019年6月以降、電力会社によるブロックチェーン技術の活用は増加傾向にある。

例えば、2019年6月6日北海道電力は、ブロックチェーンを活用した事業創生を手がける株式会社INDETAILと、今後の電気自動車およびプラグインハイブリッド車の普及拡大に伴うEV等の充電設備を重要な社会インフラと見据え、ブロックチェーン技術を用いたEVスタンドのプラットフォーム構築に関する共同研究を発表した。

また、2019年6月27日には熊本電力がQ&Aサイト「OKWAVE」を運営する株式会社オウケイウェイヴの海外グループ会社で、ブロックチェーン関連事業を手がけるOKfinc LTD.との業務提携を発表し、OKfincが行うマイニング事業「OKGenesis」への電力供給を開始している。

日本では2009年から太陽光など再生可能エネルギーを電力会社が買い取ることを国が保証する「固定価格買取制度」が始まった。そのため個人において余った電力を販売できるようになった。また電力やガスの小売も次々と自由化し、消費者が自らどの企業から電気やガスを購入するかを選ぶ意識が根づき始めている。
また、再生可能エネルギーなどの分散型電源を保有する消費者が増え、発電した電力を売買する電力取引の仕組みやサービス提供会社が必要となってきている。

そのためブロックチェーン技術の応用については、電力各社は電力を個人間で売買する「P2P(個人間)電力取引」プラットフォームの実証実験などに注力している。

東京電力や関西電力、大阪ガスをはじめとする大手電力会社も個人間電力取引プラットフォームの構築のため動いている。東京電力はエネルギー分野でのブロックチェーン活用を推進するコンソーシアム「Energy Web Foundation(EWF)」に加盟、関西電力は日本ユニシスや東京大学と共同で実証実験を開始するなどしている。

個人間の電力取引需要が高まるにつれて、電力の正しい計測や電力網などインフラが必要となる。

ブロックチェーン技術が持つ「データの耐改ざん性」や「記録の不可逆性」を活用し、余剰電力の発電量や購入側の電力消費量等の情報が不正、改ざんされないようになる。そのため個人間の電力取引においても透明性が高く正確な取引が実現できる。

また中部電力に実証実験のように発電した電力の価値を証明するものとしてトークンやデジタルアセットとしてを発行することで、エコシステム内での活用や取引や決済に用いることができるようになる。手続きの短縮や簡素化にも効果が期待できる。

ブロックチェーンを活用した個人間電力取引プラットフォームをいち早く構築できるのはどこか、引き続き注目したい。