今回で最終回となる「リブラの国内における流通可能性」前回で整理したステーブルコインにおける5つの法的位置付けから、実際に「リブラ(Libra)」がどれに該当する可能性があるのか、また最終的に国内法に乗っ取って流通する可能性があるのかどうか、著名弁護士の意見を参考に検証していく。

第1回:「ステーブルコインの可能性」

第2回:「国内法におけるステーブルコイン」

著名弁護士

  • 斎藤創氏(創・佐藤法律事務所):日本ブロックチェーン協会主催「Libraレクチャーイベント:リブラならびにステーブルコインの日本法分析」
  • 河合健氏(アンダーソン・毛利・友常法律事務所)※ステーブルコインの法的分析のみ
  • A氏(匿名希望の専門家)

①仮想通貨に該当する可能性は?

ホワイトペーパーを見る限りリブラ(Libra)は仮想通貨に該当するのではと思われるが、金融庁は仮想通貨ではない方向に傾いているようだ。

ホワイトペーパーによるとリブラ(libra)は通貨バスケットであり、特定の通貨にリンクしていない、又認定再販売業者が償還を請求する際はリザーブ(準備金)の時価で償還されると想定される。その2点の理由により通貨建資産には該当しないのではないか。
ただ、ホワイトペーパーからのみは事実関係が判らない点もあり、専門家の間でも議論が分かれる部分があり、今後も議論が必要だろう。(斎藤氏)

仮想通貨に該当する場合、日本居住者に対する販売には、仮想通貨交換業の登録及びステーブルコインの金融庁への届出(実質的には承認)が必要だ。

またコインの新規取扱については、コインチェック事件以降、新規のコインは一件も承認されておらず、今後承認されるためには取引所やJVCEAといった自主規制団体、金融庁のチェックなど相当の工数が必要となる。(斎藤氏)

②為替取引(銀行法・資金決済法)に該当する可能性は?(為替取引型ステーブルコイン)

通貨建資産とみなされる可能性について

リブラが日本の法律において通貨建資産とみなされ為替取引に該当すると認定される可能性もある。例えば、通貨バスケットであっても通貨なのだから、という考え方や、また事実関係として国債の価格変動リスクなどをトークンホルダーが取っていない場合などが考えられる。
著名弁護士A氏によると、一方で発行自体が為替取引にあたるかは悩ましいという。為替取引とは「資金の移動の仕組みを用いて、資金の移動の依頼を受けてこれを引き受ける行為」だ。
また資金とは法定通貨またはそれに転換することが容易なものを指す。そうすると価値が特定の通貨に連動しないバスケット型通貨の場合にはこの資金にあたるかは議論が別れるだろうとのことだ。

為替取引に該当する場合

発行体であるリブラ・アソシエーションが銀行免許もしくは資金移動業を取得する必要が出てくる。銀行免許は通常の海外企業が取得するのは相当ハードルが高く、かなり難易度が高い。リブラがどこまで日本を重視しているかによろう
一方で資金移動業はハードルとしてはそこまで高くないが、ステーブルコインで100万円/回の制限は利便性としてどうなのか、未使用額全額の供託が要求される可能性があるなど多くの問題が出てくる。(斎藤氏)

またリブラ(Libra)を単に扱う取引所については、現行法上、通貨建資産と認定されたステーブルコインを販売すること自体は仮想通貨交換業には該当しない。

③前払式支払い手段に該当する可能性は?

リブラはリブラ・アソシエーションに加盟している企業のサービス間で使用できるとする可能性は高い。そのため前払式支払手段として構成することも考えられるであろう。ただ前払式支払い手段については、為替取引とならないように「償還」が認めらない等の制限がある。リブラに関していえば、認定再販業者を通してではあるが、リブラ準備金との交換を可能として発酵するため、「前払式支払い手段」として発行することは困難ではと思われる。

④ファンドとして金商法に該当する可能性は?

リブラ(Libra)は法定通貨や公債にバスケット方式で投資をするため、通貨や公債の価格変動から生じる利益を得るファンドや有価証券であるとみなすという考え方もある。しかし、ホワイトペーパーによるとリブラにおいて、準備金の利子は運営費など事業に使用される前提だ。そのためリブラトークンは「ファンド」にも「セキュリティー」にも該当しないだろう。

他方、リブラプロジェクトにおいて「リブラトークン」と「リブラインベストメントトークン」という2種類のトークンがある。リブラインベストメントトークンの保有者へは配当などが分配されることからセキュリティーに該当しうる。

⑤セキュリティトークン(ST)に該当する可能性は?

④から考えると、リブラトークンはセキュリティーにならず、他方、リブラインベストメントトークンに関してはセキュリティートークンに該当する可能性も高い。

結論

結論を述べると、現時点で、日本でリブラ(Libra)が国内法に乗っ取ってすぐに流通する可能性は低いと言えるだろう。

なぜなら上述のように、「②為替取引」としての銀行免許は海外企業が取得するにはハードルが高く、仮想通貨についても、リブラ・アソシエーションが交換業者の登録を取得し、かつリブラトークンを仮想通貨として金融庁や自主規制団体からの承認を得なければならない。これは特に海外企業にとってKYC /AMLの観点からも非常にハードルが高い。

他方、海外で流通したリブラトークンが日本に入ってくる、無償で配布されるリブラトークンが日本で使用される、等の可能性もあろう。

いずれにせよ、銀行業よりは仮想通貨交換業のほうが取得しやすく、「ステーブルコイン」として国内で流通させるためには「①仮想通貨」として進めるほうが現実的ではないか。

「リブラ(Libra)」に関しては、現時点で日本の法律上どのような位置付けとなるのか、ホワイトペーパーの情報だけでは一概に判断できない。専門家もまだ多くの議論をする余地があるとしている。また、今後リブラの追加発表や規制当局との対話の進捗によっては日本国内でも可能性が一気に高まることもありえるだろう。

そのような場合も想定し、日本の場合はまず「ステーブルコイン」に焦点をあて、関係業界や自主規制団体や金融庁を含めしっかりと議論を進めていく必要がある。