今回のインタビューは、NEM財団のジェフ・マクドナルド氏。

NEMと言うと、暗号通貨業界についてよく知らない人からすれば、コインチェックでの盗難事件や昨年度のNEM財団内部の騒乱といったネガティブイメージも持つ人も少なくはないだろう。

しかし、暗号通貨業界の中ではどこのコミュニティーよりも強い絆がnemにあるのも事実。そして、何よりも昨年度の選挙後は体制を一新し延期を繰り返していた次世代コアエンジン「Catapult」もついにローンチが目前の予定となっている。NEM財団の共同創設者であり、コミュニティと共に歩んできたJeff氏の素顔に迫る。


NEMの詳細についてはこちら:『NEMとは?次世代コアエンジン「カタパルト」など概要や特徴を解説』


Jeff、今日は貴重な時間を割いてくれてありがとう!まず、この業界に入る前の話を教えてもらえますか?
アフリカのレソト王国で、平和部隊にボランティアとして参加し、HIV/AIDSの教育に2年間従事していました。その後、韓国で助教授として初年度コミュニケーションクラスの授業を10年間受け持っていました。
そんなJeffがブロックチェーン業界に入ったきっかけは何ですか?
2013年にビットコインを発見しました。 最初は、投機や送金に活用しました。ビットコインでの送金は、銀行よりも早く手数料も銀行よりも安く済みます。当時は今よりも複雑でしたが、それでもブロックチェーンのもたらす未来を見る事ができました。2013年1月に、NEMが最初のFacebookページを作る手助けをした事がきっかけでNEMと関わるようになったのです。
マウントゴックスの破綻前から暗号通貨を利用していた人って実はそんなに多くはないのですが、あなたが業界に入ったのそれ以前だったと思います。当時の印象的なエピソードはありますか?
マウントゴックスに登録しようとしたけれど、幸いな事に手続きに失敗し、アカウントを作る事はできませんでした。初期の時代は、アメリカのコインベースや韓国のKorbitを使っていました。
そう考えるとKobitも古いんですね。もっと新しいと思っていました。
Jeffさんに刺激を与えた人を一人紹介して頂けますか?また、その理由もお願いします!
私にとって一番影響力が大きかったのはNick Szaboです。彼は、お金の歴史、コンピューターサイエンス、経済学、法律、そして社会学のアイデアを見事に組み合わせて、幾つかの素晴らしいアイデアを思いつきました。私が本当に感心しているのは、首尾一貫した理論と内容をブログでまとめていった事です。
最近では、どんなプロジェクトに感心がありますか?
私はNEMのApostilleプロトコルの発明者なので、Catapultにアップデートされるのがとても楽しみです。また、私たちはCatapultの新しい機能の多くをLuxTagでも使用できます。LuxTagは多くの素晴らしい成果をNEMエコシステムに提供するでしょう。
Catapultのアップデートはみんな待ちわびてますね!
2018年から2019年の前半はブロックチェーン業界にとって冬の時代でしたが、あなたはブロックチェーンマーケットについてどう思っていますか?
ブロックチェーン業界には過去2回バブルがありました。2013年と2017年です。2回のバブルを経ましたが、着実に進化を続けています。次のバブルがいつになるかは分かりませんが、確かな事は、バブルと破綻はセットだという事です。ブロックチェーン業界自体がもっと大きくならない限り、バブルと破綻を繰り返すのが常だと思っています。
2019年は、ブロックチェーン業界はどんな年になると思いますか?
2019年は今のところ、投機家にとっても投資家にとっても良い年でした。この傾向が続くことを期待しています。ビットコインもブロックチェーン業界全体も上がったり下がったりを繰り返すでしょうが、大底は越えたのではと思っています。 ブロックチェーン業界全体は大きな進化を経ました。多くの国の政府や大企業がブロックチェーン業界に参入してきた事にとても興奮しています。この流れは今後何十年も続いていくでしょう。
トークンホルダーについてアドバイスはありますか?
投資家は、良いプロジェクトを見つけたら、買ってずっとHODLしておくべきです。投資家達は、コミュニティの成長を支えたり、テクノロジーの普及を支える事もできます。投機家達は、チャートを眺めながらその日のニュースを見てトレードをします。
私はどちらも大切だと思いますが、ブロックチェーン業界には、より多くの投資家が必要だと思っています。投機家の方が儲かるかもしれませんが、投資家の方がやり甲斐がいっぱいあります。
現在のブロックチェーン業界やマーケットの課題は何だと思いますか?
ブロックチェーンテクノロジー自体はまだまだ黎明期であり、多くのものが欠けています。ビットコインはもっとライトニングネットワークの普及を促進すべきだし、仮にライトニングネットワークが普及したとしてもスケーラビリティが足りるかどうかまだまだ分かりません。
イーサリアムも同様にスケーラビリティに問題を抱えていますが、まだ証明されていない新しい方法で解決しようとしています。NEMは一からプログラムを再構築して、スケーラビリティ等の多くの問題に対応できるバージョンを3.5年かけて開発してきました。2019年後半にCatapultがリリースされますが、今からとても楽しみです。
業界全体の発展には何が必要だと思いますか?
政府や大企業をもっと巻き込まないといけません。だからこそ、IBMやFacebookがこの業界に入って来た事にとても興奮しました。ビッグプレイヤーの参入は、私たちが常々言っていた事が正しかったことの証明でもあります。
あなたがビジネスをやる上で最も大切な事はなんですか?
誠実さと一貫性を持って行動することだと思います。ブロックチェーン業界では、すぐにお金持ちになる事の誘惑にかられる人が多すぎます。私はもっと長いスパンで、この世界を良くするためにブロックチェーン業界にいます。その為にも、長く続く信頼関係が必要です。
Jeffの人生にとっても最も挑戦的だった事は何ですか?
私はしばしば病気になります。最初に喘息、次にクローン病、そして他のいくつかの病気も抱えています。なので、自分の健康を保って良好な状態にするのに多くの苦労をします。なので私にとっては、適度に仕事を休み、運動をし、睡眠をとって体力と仕事のバランスをとるのが最も大事なことです。しかし、しばしば働き過ぎて健康を犠牲にしています。
日本のみんなもJeffの体調は気にしてますよ。今日は元気そうな顔を見れてよかった。体は資本だからお互い気をつけましょう!
未来に対してどんなビジョンをもっていますか?
私は、ブロックチェーンによって社会がより、誠実で透明性があり、安全で平等になっていることを願っています。これらの改革は、ブロックチェーンが政府の構造に組み込まれ、選挙やIDと紐づいていく事で実現できると思っています。
読者に対してお勧めのインタビューされるべき人はいますか?
NEMのコアディベロッパーのインタビューを読んでみたいです。彼らへのインタビューは少ないので。
10年後には世の中はどうなっていると思いますか?
10年後には、ついにブロックチェーンは一般的に普及し、世界の誰もがブロックチェーンとつながったアプリを毎日使っていると思います。その頃にブロックチェーンマーケットがどんな市場規模になっているかは分かりませんが、今とは比べ物にならないぐらい大きくなるのは間違いないでしょう。
ブロックチェーン業界以外で尊敬するアントプレナーはいますか?
勿論イーロン・マスクです。彼をとても尊敬しています。私は他の業界でも広く成功している人を尊敬しています。彼は今、決済・電気自動車・宇宙事業で既に成功しています。20年後に彼がどんな事をしているか誰にも分りませんが、きっと凄い事をしているでしょう。彼が今以上に大きな新しいプロジェクトをしていたとしても、私は驚きません。
あなたが感銘を受けた本や映画はありますか?
私が好きな映画は、『クラウド・アトラス』です。私は、人々が何度も生まれ変わって繋がっていくという考え方が好きです。人生において、ある程度のところまでしかできなかった事は沢山ありますが、それを再びやり直すチャンスがあるという考え方は好きです。
面白い!どの映画が好きか?というこの質問は、一見関係ないように思えますが、好きな理由を聞いていくと、その人の価値観を垣間見ることができるから私は好きです。
どこの国が好きですか?
私は色んな用事で色んな国へ行きました。アメリカは住むには良い国です。日本は綺麗で素晴らしい食事がいっぱいあります。フィリピンの人々はとてもフレンドリーで素敵です。南アフリカの人々は、良い時間を過ごすのにどうすべきかを知っていて、手放す事の大切さも知っています。ヨーロッパには、学ぶべき多くの偉大な文化と歴史があります。そして韓国には多くの友人が居ますし、食べ物も好きです。
いろいろな国の良いところを見つけれるって素敵ですね。日本のNEMコミュニティの印象はどうですか?
日本のNEMコミュニティは本当に驚きです。日本のコミュニティは、ブロックチェーンの概念、技術への深い理解があり、ユースケースを真剣に考えています。日本へ訪れるのはとても大好きで、もっと沢山訪れたいです。
日本のコミュニティと他国のコミュニティの違いはありますか?
他の多くの国は暗号通貨を投機とお金儲けの為にしか考えていないので、日本は大きく違います。日本はブロックチェーン技術全体とアプリケーションレイヤーを見ており、金融庁と一緒に規制作りに励んでいます。
日本のブロックチェーン技術へのアプローチはとても慎重かつ、技術先行で進んでいるように見えます。日本のNEMメンバーが、他のブロックチェーンと比較し、私達のNEMがどのように動いているか研究するのに時間をかけてくれているのがとても嬉しいです。今年後半リリースされるCatapultは、セキュリティ、非中央集権性、スケーラビリティ、使いやすさを軸に大型アップデートをします。このCatapultのリリースが日本のNEMコミュニティにも良いニュースになると確信しています。
趣味はなんですか?
スキューバダイビングとシュノーケリングが好きです。海に潜っていると余計なものが無くなっていき、まるで違う世界に行くような気分になります。
海の中では重力の感じ方も変わり、前後左右だけでなく上や下にも自由に動けるようになります。どの方角に向かっても、同じ労力です。動物達も地上とは全く違う形をしていて、どうやって進むかも地上とは全然違います。歩くのではなく、泳ぐのですから。私にとって海に潜るということは、違う星に冒険に行く最も簡単は方法です。
ブロックチェーンを一言で言い表すと何ですか?
『信用』ですね
この革命に名前をつけるとすると、なんでしょう?
『情報と価値の透明化』でしょうか
歴史の本に載る時、どのような人として評されたいですか?
私は、自分が歴史の本に載りたいかどうか定かではありません。私は、何かを作り上げ、それを人々が使っているのを見るのが好きです。
人々がまだ持っていないものを扱っていたというだけで、私を特別な存在のように扱われることにちょっと戸惑いを感じます。人々は皆それぞれ個性があり美しく、それぞれの人生をそれぞれの場所で歩んでいます。なので、私は自分が歴史に名が残る必要はなく、むしろ残らない事を希望します。
痺れる回答!(笑)これからも応援してます、今日はありがとうございました!

技術ファーストな業界であり、かつ黎明期である為、技術を完成させていく忍耐力、技術力、そういった強さがもとめられる。

結局テクノロジーを進化させていくのは「人」なのだろう。

良いコミュニティーを育て、維持する事もとても重要な要素である。良いコミュニティーの形成は言葉で言う程容易ではない。

良いコミュニティーを育てていくにはプロジェクト自体だけではなく、関わる人を惹きつけ続ける魅力がメンバーになくてはならない。

私はJeffの回答から滲み出てくる1つ1つにとても温かさを感じた。きっと彼が醸し出す優しい空気感が良いコミュニティーを支えている要因の一つなのだろう。

暗号通貨業界の中ではどのコミュニティーよりも強い絆がある印象だった「NEM」。今回のインタビューを通じて私は、その理由に少しだけ触れられた気がする。


NEM財団のFlora氏独占インタビュー:【BLOCK#7】台湾nemberが語る「誠実さと一貫性」によって生み出されるNEMの絆


記事編集:The Nodist編集部
現地取材サポート:絢斗 優