インタビュー第2弾は、世界最大の取引所バイナンスのCEOであるCZ(Changpeng Zhao)だ。

この業界で彼を知らない人はいないだろう。
彼は基本的に日本語発信のメディアによるインタビューを受けつけない。
なぜなら彼は日本のレギュレーションに対するリスペクトを持っているからだ。

彼とインタビュアーである藤本との交流は、2017年の秋から約1年半と長くはないが、バイナンスが設立された2017年7月から同社は急激な成長をしてきた為、人員確保が急務だった。そこで当時、藤本がインターン生や就活生を紹介するというところから縁が深まった。

実は、CZについて藤本には印象深いエピソードがひとつある。
業界のプレイヤー30人くらいが集まるある交流会でのことだ。最初は各グループで話が盛り上がっていた。しかし、気づくと会議室が静かになり、全員が彼を中心に輪を作り、彼の話に耳を傾けていたのだ。

その時から彼のカリスマ性は抜きん出ていた。

そんな彼が、「基本的には事業の話は抜き」という条件で、特別に「The Nodist」に友情出演してくれた。

このインタビューは、韓国で行われたカンファレンスにおいて実現したものだ。

この業界で生き残るには様々な戦い方がある。
その中で、彼は誰よりも「国境のない、チャンスが広がる世界」を見据え、そして最も早く行動している人物かもしれない。
本日は、少しでもそんな彼の素顔に迫れたらと思う。

 

今日は、時間を作ってくれてありがとう!私は、CZなしにこの業界は語れないと思っているので、インタビューの快諾にとても感謝しています。今日は少しでもCZの素顔に迫ることができたらと思います。
こちらこそ。私は日本には行かないから、Maiがもし韓国に来たらね!という話をしていたけど、本当に来てくれたのだね。(笑)ありがとう。
はい!とてもCZに会いたかったので。
早速ですが、CZは暗号通貨業界に関わる前はどんな仕事をしていたのですか?
私は、株式や先物取引のトレーディングシステムの開発など、ずっとフィンテックに従事していました。東京で小さなIT会社に勤めたり、NYにあるブルームバーグに勤めた経験もあります。
そのような経験の中、この業界に参入したきっかけは何だったのですか?
2013年に、元BTCチャイナCEOボビー・リーとポーカーをしていた時に、ビットコインについて教えてもらいました。私はビットコインをすぐに調べて、これはインターネットよりも大きくなるという期待を持ちました。気づけば、当時の仕事を辞めて暗号通貨業界の仕事を探し始めていましたね。
ポーカーをしていた時に!映画のオープニングシーンでありそうですね。(笑)
CZが業界に参入したのは、マウントゴックスよりも前の話ですよね?
はい、マウントゴックス事件の前ですね。マウントゴックスは私が初めて使った取引所でした。私は、破綻事件の時もいくらかの資産を置いたままでしたね。
実は2013年12月にマルク・カルプレス氏に渋谷で会ったことがあります。
当時、彼はマウントゴックスチャイナのCEOを探していて。場合によっては彼らと一緒に仕事をしていたかもしれないです。
まさか!そんな事があったのですね。(笑)
そんなCZがこの業界で影響された人が誰か気になります。
たくさんいるのですが、ただ1人選ぶとすれば、ヴィタリック・ブテリンには大いに影響されました。2013年にラスベガスでのカンファレンスで出会い、2年ほど連絡を取り合っていました。2015年にヴィタリックが東京を訪れた際には、私の家に滞在したりしていました。
彼はその時、既にイーサリアムを始めていたのですが、私はイーサリアムについて、構想が壮大過ぎて、完全なブロックチェーンを作るのは極めて難しいという話をしたことを覚えています。なので、私は当時それほどイーサリアムを持ってなかったのです。これにはとても後悔しています。(笑)なぜなら彼はそれを作ってしまいましたからね。
そうだったのですね。
イーサリアムがこれほどまでに大きく成功し、それを間近で見ることができたのは、本当に素晴らしい経験です。ヴィタリックは本当にインスピレーションの塊のような人です。ここではすべて紹介出来ませんが、他にも私に影響を与えてくれた人物はたくさんいます。
CZが最近興味を持っていること、あるいはプロジェクトは何かありますか?
私はバイナンスの事業でとても忙しく、他のプロジェクトをじっくり見る時間があまりありません。あと、取引所とニュートラルな位置を取るために、私自身も他のプロジェクトについてはコメントしないようにしています。
2018年は、スタートから大きく変動した年でしたが、昨年の暗号通貨市場について、CZがどのような見方をしていたのか教えてくれませんか?
私は、全く心配していませんでした。なぜなら、2000年から2002年にかけてのナスダック市場でも似たようなチャートを見たことがあるからです。市場にはサイクルがあります。重要なことは、起業家たちがどんどんと暗号通貨業界に参入し、業界を築き続けているということです。私はこの業界が発展していくことを心から確信しています。
それでしたら、2019年の暗号通貨市場とブロックチェーン産業はどうなると思いますか?
未来を予測するのは難しいのですが、多くのアプリケーションが開発され、多くのユースケースが出てきて、マス向けに導入されていくでしょう。ブロックチェーンは様々なことに利用され始めると思います。そして、それが最も重要なことなのです。
なるほど。そうなるために、現在のブロックチェーン産業と暗号通貨市場における問題は何だと思いますか?また、それを解決するアイデアがあれば教えてください。
私たちは、まだこの業界の初期段階にいます。なので、もっと多くのアプリケーションやユースケースが必要だと思いますし、またこの業界で起業する人たちを支援する必要もあると思っています。
もっとたくさんブロックチェーンに触れられる機会を増やさないといけないなと私も思います。
CZからトークンホルダーにアドバイスするとしたら何かありますか?
自分が投資しているプロジェクトの詳細についてよく学び、自分で判断しましょう。どんな投資にもリスクは伴います。自分がしていることについて、よく自覚することが大事です。
CZにとって最大の挑戦とは何ですか?
ビジネス面に関して言えば、日々変化がある環境にいるので、毎日色々な課題が出てきます。その中での大きなチャレンジとは、いいチーム作りをすることです。またチームを拡大させることにも繋がるので、常に良い人材を探しています。
良い人材を?
はい。他にも日々問題が発生したら対応するようにしていますが、良い人材を採用して団結力のある強いチームを作るのが大きなチャレンジです。私たちのミッション・バリューに共感ができる人、お金や暗号通貨の考え方について方向感を持っている人、自由を大切にする人、倫理行動ができる人が良い人材だと私たちは考えています。繰り返しになりますが、良い人材を見つけること。これが今私にとって一番大きなチャレンジだと思っています。
プライベートでの挑戦は何ですか?
もう少し睡眠時間をちゃんととる事かな。
それだけ?(笑)
そうですね。僕は現在行なっているすべてのことに満足していて、すべてが自分にとって意味のある行動だと理解しています。だから仕事に関しては、かなり満足度が高いです。
手がけていることはすべて意味があると信じていますし、人間社会にとって、とてもインパクトもある仕事であり、価値のあることだと思っています。ですので、すべてに満足していますね。
睡眠時間以外は。(笑)
先ほど、チーム作りが1番大きな挑戦とおっしゃっていましたが、CZのチームは本当にみんな優しくて、私は大好きなのですが、どのようにしていいメンバーを集めているのですか?
チームビルディングにおいて、まず大切にしていることは、人格です。特に性格面と情熱面を見ています。例えば、素晴らしいディベロッパーでも暗号通貨がそこまで好きでなければ採用しませんし、素晴らしいマーケッターでもブロックチェーンに興味がなくて9時〜17時で働きたい人材でしたら採用はしません。
私たちは、暗号通貨を使うことによってこの社会における「お金」の「自由度」を増やしたいというミッションを持っています。ですので、それに共感してくれる人材を集めるようにしています。
実は、採用する際には前職よりも低いオファーを出すようにしています。例えば、前職で週100ドル支払っていたら、私たちは週80ドルを提示します。こうすることによってその人の情熱が見えてくるのです。私たちが採用する人材は、心の底からこの仕事に可能性を感じている人だけです。
素晴らしいチームメンバーが揃っていることが、実はバイナンスにとって一番の強みであり、成功の秘訣だと思っています。
チームビルディングにおいて、とても参考になりますね。
では、少し未来の話をさせてください。CZはどのような将来のビジョンを持っていますか?
私は何千ものブロックチェーンと何百万ものトークンがある未来を見据えています。そして、現在の金融システムより100~1000倍以上大きく、またはるかに効率的な暗号通貨エコノミーが見えています。私たちが現在、かつて送っていた手紙の何千倍ものメッセージを毎日やりとりしているのに似ていますね。
手紙からメールの例はわかりやすいですね。
この業界以外に、CZが尊敬する起業家はいますか?
そうですね。多くの起業家を尊敬しています。イーロン・マスクやジャック・ドーシー、スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツなど、彼らから学べることが色々とあります。ただ、人は皆それぞれ個性を持っていると考えているので、全く同じになりたいとは思わないですし、自分がイーロン・マスクみたいになろうとも思わないです。
なので、私はそれぞれの強みを勉強するようにしています。例えばスティーブ・ジョブスはすばらしい創造力を持っていました。その能力が高かったので、ユーザーの声を拾わなくても済んだ。私にはこれはできないと思っています。イーロン・マスクにはリスクを恐れない強さがあります。先ほどお話したヴィタリック・ブテリンも同様ですね。それぞれ学べる要素を持っているのでそれを勉強しつつ、自分の長所と短所を見つけるようにしています。
イーロン・マスク氏といえば、最近Twitter上で彼のプロフィールを「CEO of Dogecoin」に変更して、私たちの業界と距離がぐっと近づきましたよね。(笑)
確か、Dogecoinのコミュニティでプロジェクトを管理するCEOが降りて、新しいCEOを探すという流れの中で、何人かの候補の中から、彼が投票で選ばれたのを受けてのことでしたよね。
それをエイプリルフールに。(笑)
はい、彼はいつもユーモアのある人ですよね。(笑)
ただTwitterのプロフィール文を「CEO of Dogecoin」に変えたのは、我々の業界にスポットライトを当ててくれたと思いますし、業界の信頼を上げてくれているとも感じます。彼は、いつもビジネスにおいても面白さを求めていて、このようなところも私が彼を好きな理由のひとつです。
Twitterのポストではなく、プロフィールを変えるあたり、ジョークにも妥協がないですよね。(笑)
それから、ジャック・ドーシーも暗号通貨を積極的にサポートしていることを表明してくれています。今お話した2件は、どちらも今年に起きた出来事です。著名な起業家の皆さんがこの業界との接点を持ちはじめ、発言をしているのは興味深いですよね。
それにしてもイーロンのジョークは面白かった。もうCEOは降りてしまっているようですが、我々は、Dogecoin元CEOのICOリスティングをお待ちしております。(笑)
CZ、そのジョークもとても面白いけど、発言に気をつけて!(笑)
読者の皆様、今のは冗談ですからね〜!
でも、もしイーロン・マスクやジャック・ドーシーとコラボレーションできるとしたら何かアイディアはありますか?
いろいろなアイディアがあります。まず一番はそれぞれのビジネスにおいて我々のトークン「バイナンスコイン(BNB)」をサポートしていただけたらと思っています。
例えば、決済サービスを展開している米Squareは、現在ビットコインをサポートしてくれてます、もしその決済サービスがバイナンスまで広がったら我々にとっても大きなサポートになることは間違いないでしょう。また、将来的に彼らは独自のトークンを発行するかもしれません。その時にリスティングする際に取引所として使っていただけるのであれば是非前向きに検討したいです。
また、テスラ・モーターズの車をBNBやビットコインで購入できるような仕組みを作るのも面白いかもしれません。我々ではないかもしれませんが、そう遠くない未来に、今話をしたような事例が出てくるのではないかと考えています。
私もそのような予感がしています。
話は変わりますが、CZの好きな映画や本があったら教えて欲しいです。
最近だと、『アリータ:バトル・エンジェル』が面白かったです。
簡単にいうと、女の子のロボットが戦う映画ですね。『タイタニック』や『アバター』を製作したジェームズ・キャメロン監督の作品です。ストーリーが予測できないところと、社会もヒエラルキーも定義も自由も、私たちが知っている社会とは全て違うところがすごく好きです。実はこの映画は、日本の『銃夢』という漫画をハリウッドで映画にしたものなのです。
この映画に出会う前は『インターステラー』が好きでした。その他は・・・いい映画はたくさんあるので難しいのですが、『ショーシャンクの空に』や『スターウォーズ』も好きです。
CZは、スティーブン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』という作品はご存知ですか?
あの映画は正直なところ、まあまあでしたね・・・
え?本当ですか?
日本では、DAppsの将来が描かれているとも言われていて、とても人気ですよ。
そうですね。『レディ・プレイヤー1』は、周りの知人がとてもいい映画だと言っていたので、もともとの期待値が高すぎたのかもしれません。あと、飛行機の中で小さなスクリーンだったので迫力に欠けたというのもあります。
ぜひ、大きな画面でも観てみてください。
好きな本はありますか?
好きな本は3冊あります。1冊目は、 1850年に書かれた『The Law』という本です。約170年前に書かれた本なのですが、法律とはどうあるべきかという内容で、現在でも販売されています。
2冊目は『Economics in One Lesson』という本です。社会の経済的要素についてよく書かれています。なぜ政府の助成金が社会にとって良くないのか、なぜ課税がよくないのかなど政府と経済の関係について学べます。何が良くて、何が良くないのか、また最悪な事態は表面上は良く見えるなど、書いてあることはとてもシンプルなのですが、ためになる一冊でした。
3冊目は『Sapiens: A Brief History of Humankind』です。人間がどのような進化を経てきたのか、また人間の行動と振る舞いについて書かれています。
『サピエンス全史』は私も読みました!CZと同じで嬉しいです。
かなり厚い本ですが、読むと人間についてより理解ができ、人の行動理由なども分かります。世の中の全体像がわかっている方が、成功しやすいと思っていますので、とても参考になりました。
CZの好きな国はどこですか?
私は国という単位にとらわれていません。私たちは地球に住んでいるという感覚です。
なるほど。CZらしい回答ですね!
趣味は何かありますか?
趣味はあまりないのですが、強いてあげるならばTwitterですね。(笑)よく読んでいます。
あとは毎日30分〜60分のエクササイズをしています。ジョギング、腕立て伏せ、腹筋など、機械を使わないトレーニングをやっています。
CZのように忙しくても、エクササイズの時間は確保しているのですね。私も見習わないと!
インタビューした方がいい、あるいは読者に紹介したい人物は誰かいらっしゃいますか?
ウォレットサービスを提供している「Trust Wallet」のViktor Radchenko はとても面白いと思いますよ。
機会があれば、ぜひ「The Nodist」でもインタビューしてみてください。
はい!
では、CZにとってブロックチェーンを一言で表すと?
「Freedom」ですね。
ブロックチェーンによるこの革命にどう名前を付けますか?
これは革命ではないと思っています。進化であるべきです。私たち人類は少しずつ、一歩ずつ踏み出して、前に進まないといけません。
歴史に名を残すとしたら、どのような形で名を残したいですか?
「暗号通貨の導入を”少しだけ”手助けをしてくれた人」ですね。

皆さんは、2017年に起きた西日本での豪雨被災、いわゆる「平成30年7月豪雨」では

彼が主体となって寄付を集め、総額にして約1億5千万円を日本に寄付をしてくれたのをご存知だろうか?

それについて、お礼と合わせてなぜかと尋ねたことがあるのだが、「困った時に助け合うのは当たり前だよ。」と彼は笑顔で答えた。

CZは他にも「バイナンスチャリティー」を設立するなど、こういった活動に積極的に関わっている。

このインタビューを通じて、彼の国や既存のルールといったものに縛られない「強さ、自由」と、その裏側に彼が持っている、より良い人間社会のために常に活動する「献身さ、優しさ」を感じることができた。

国境を越えて活躍する彼が今度どのように新しい経済、世界を作っていくのか、引き続き注目していきたい。

写真:The Nodist編集部